中国・北京 — 中央政府と省政府に食糧安全保障を経済開発計画に組み込む責任を課す中国新法が6月1日に施行され、主食穀物の「絶対的自給自足」が前面に押し出された。
ロイター通信によると、この法律は、共産党が地方政府と農業業界に食糧増産を指示する既存の指針に法的枠組みを与えるものだが、法律がどのように施行されるかについては詳細が明らかにされていない。この法律には、農地の転用防止、遺伝資源の保護、浪費防止などが含まれる。
世界第2位の人口14億人を抱え、世界最大の農産物輸入国である中国は、近年、海外の供給者への依存を減らすことを優先課題としている。中国は世界の穀物の4分の1を生産し、世界の耕作地の10%未満で世界人口の5分の1を養っている。
第一読会からわずか6カ月で可決された食糧安全保障法の採択を急ぐ動きは、耕作地や水資源の不足、労働力不足、農業技術の不足など、生産を抑制している問題の解決を中国が急いでいることを反映している。アナリストらはロイターに対し、この法律は文言が曖昧で、中国が食糧生産を増強する上で大きな影響はないかもしれないと語った。
同法の規定によれば、中国共産党は、輸入を控え、科学技術の進歩を活用して生産を拡大することで、「中国を第一に考える」国家食糧安全保障戦略の実施を主導することになる。
同法は「穀物を地中に貯蔵し、技術を使って穀物生産を改善するという原則を堅持し、穀物の基本的自給自足と食用主要穀物の絶対的自給自足を確保する」としている。また、国家穀物緊急計画と食糧安全保障監視システムの確立も規定している。
中国は「粗粒穀物」の定義を拡大し、モロコシ、大麦、ソバ、緑豆、ジャガイモに加え、キビやオート麦も含めた。穀物とは、小麦、米、トウモロコシ、大豆、粗粒穀物を指す。
同法では、中国は「国際的な食糧安全保障協力を強化し、国際穀物貿易がその役割を果たすことを可能にする」とも規定されている。詳細は明らかにされていない。
2022年2月に発表された第14次5カ年計画(2021~2025年)では、年間の穀物生産量を6億5000万トン以上、肉類生産量を8900万トンとすることを目標としている。また、農村部の貧困撲滅、食糧安全保障、種子開発の維持が最優先事項となるとも述べている。
中国は世界最大の小麦生産国であると同時に、最大の消費国でもある。米国農務省対外農業局(FAS)は、中国が2024~25年の販売年度に1億3800万トンの小麦を収穫し、1億4650万トンを消費すると予測している。FASはトウモロコシの生産量を2億9600万トン、総消費量を3億1800万トンと予測している一方、大豆の輸入量は1億300万トンに達すると予測されているが、生産量はわずか1960万トンにとどまる。